繰り糸囃子

 

幸乃小春(ゆきの こはる) 女 

主人公。幸乃家の次女。
父・信貴の指針で屋敷住まいながら、家事手伝いをしている。
そのため結う面倒を省くため、髪を短くしている。
年頃の令嬢たちの苦労知らずの手に、劣等感を抱いている。
世話役は喜久衛門の時から、ずるずる継続されてしまった。
父譲りの目利きの才がある。
最初久紫に睨まれたため、「異人さん」と呼ぶのが定着している。

 

宮内久紫(みやうち くし) 男

もう一人の主人公。黒髪黒目の異国の人形師。
美麗な顔立ちで常に片眼鏡をかけている。冷たい印象も相まって、女性に人気がある。
実は発音がうまくできないことに劣等感を抱いている。故の無愛想。
師である喜久衛門を知る小春には、よく喋る。
喜久衛門を尊敬する反面、表情豊かな彼の人形を疎んじる傾向が強い。
最初に紹介されなかったので小春の名を知らず、今更変えることもできず、「幸乃の娘」と呼んでいる。

 

雪乃

久紫と喜久衛門の合作の、実寸大の女の人形。
闇に浮かぶ塗料を用いたクセ字で、背中に”雪乃”と書かれている。
久紫により、滑らかな肌質を得、喜久衛門により、柔らかな微笑を得る。
小春の目利きでさえ人間と見紛うほどの出来栄え。
髪には久紫・喜久衛門が作ったにしては珍しく、人毛が使われている。

 

宮内喜久衛門(みやうち きくえもん) 男

小春に世界を教えた、久紫の師匠でもある人形師。
世間では頑固一徹な仕事人間と認識されているが、正体はかなりいい加減な人。
精力的な爺で、花街通いが毎日の日課と豪語する。
作る人形はどれも表情豊かで、見るものの心を和ませる。
久紫を弟子に迎えたものの、教えたものは嘘が多い。

 

佐々峰雪乃(さざみね ゆきの) 女

人形である雪乃のモデルと思われる人物。喜久衛門・久紫の本島での世話役。
優しい微笑みは母のように慈愛に満ちたもの。
喜久衛門とはあまり歳が離れていないそうだが、外見は恐ろしく若い。
心から喜久衛門を慕い、彼の支えであり続けている。
喜久衛門を信頼しているため、彼の言を忠実に受け止めやすいのが、難。

 

幸乃涼夏(ゆきの すずか) 女

小春の姉。幸乃家の長女。
昔、信貴の紹介で出逢った本島の男と恋に落ちるが、裏切られ精神を病む。
屋敷に寝たきりで、時折起き上がったりはするものの、目の焦点は合っていない。
恋患う熱味を帯びた瞳と、やつれた体は病的な白さ。
元は健康的な女性だったため、変わり果てた姉のその瞳を小春は嫌っている。

 

幸乃信貴(ゆきの のぶたか) 男

小春・涼夏の父。幸乃家当主。
守銭奴に思われがちだが、家族を大切に思っている。
春野宮になくてはならない重鎮のため、世界各国を飛び回っており、在宅日数が少ない。
自分が死んで、幽藍島から出ても生活できるよう、手伝いの数を減らしている。
そのせいで小春が春野宮の令嬢からどう思われているかは、知っている。

 

幸乃絹江(ゆきの きぬえ) 女

小春・涼香の母。信貴の妻。
一見するとおっとりした人格者だが、気性はかなり激しい。
信貴同様家族が一番。その他は二番。
信貴の方針に逆らう気はないが、小春の劣等感を煽る令嬢たちが好きではない。
ただし、さつきのことは随分と気に入っている。
平時、物静かな麗人だが、時折少女のようにはしゃぐ。

 

春野宮さつき(はるのみや さつき) 女

春野宮の分家の令嬢。分家の中でも本家に近い血筋。
小春と同い年ながら、幼さを感じさせない美人。
黒い艶のある長い髪と広いおでこが印象的。
久紫を自分の旦那と信じ込んでる、かなりイタい娘。
外見も地位も兼ね備えた自分ではなく、親の功績で久紫の近くに小春がいるのが許せない。
料理の腕は壊滅的に悪い。手伝いに対する扱いは女王様。

 

春野宮伸介(はるのみや しんすけ) 男

春野宮の分家の令息、もとい愚息。実はさつきの兄。
絹江が初恋の人で、その関係で小春と幼馴染。
初恋には勿論破れ、次に小春を好きになったが対象外にて終わる。
今現在は手伝いで同じく幼馴染の瑞穂と清い交際中。
しかし、生来の遊び人気質か、狭い島にいても所在が掴めぬほど、放蕩ぶりを発揮している。

 

柴又瑞穂(しばまた みずほ) 女

春野宮の手伝いで、小春・伸介の幼馴染。伸介の恋人。
三つ編みの柔らかな物腰の少女。水場仕事が多い割に、あかぎれになることが少ない手の持ち主。
幼少の頃から伸介を慕っていたため、恋仲になれたことを嬉しく思っている。
反面、身分の違いに縛られており、伸介の放蕩を咎められずにいる。
年下の小春を様付けして呼ぶが、小春に様付けして呼ばれるのは苦手。
常に一歩後ろを歩く性格ながら、一端激情に駆られると、何をしでかすか分からない。

 

春野宮志眞(はるのみや しま) 男

春野宮本家の三男ながら、有力な次期当主候補。
髪は緩く縛れるほどの長さで、外見は優男。
常に人好きのする微笑みを浮かべているが、瞳に宿る光は打算的。
昔、幽藍を訪れた際、己の内面を察する小春に出逢い、興味を抱く。
彼なりに小春を好いているが、あくまで、彼なり。
一方的な上に嫌がらせに近い行為を繰り返しているため、小春からは存分に嫌われている。

 

モドル


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