妖精の章 十七
目と鼻の先――程、近くはないが。
「っ野郎! よくもよくもよくもよくもよくも!! 泉に、アイツに、恋腐魚なんぞ喰わせやがったな!?」
押し倒した店主の頭を床に捩じる、上半身裸の美丈夫。
煙管を咥えたまま彼がつく悪態に、件の泉は戸惑うばかり。
ワーズへ悪質な嫌がらせをしている事は知っていても、こうも直接的に何かをする場面は見たことがなかった。
どちらかといえば、こういう役回りは、宿敵と目されているらしい、ランに訪れそうなものだが。
そう思い、行動を考えあぐねた泉は、ランを見上げる。
が、その視線はシウォンと対面した場所を見つめるばかりで、こちらの騒動には尖った耳さえ向けられていない。
しかもまだ、震えたままで。
どうやら震えの原因はシウォンではなく、他にあるらしい。
一体、何を見つめているのか。
気にはなったものの、泉が優先すべきは、現在危険に晒されているワーズの身の安全。
猫に容赦なく叩かれても傷一つ付かない、丈夫の一言で片付けられない身体を持っていようと、痛みはあるというのだから。
「ぉおおおおっ! 痛い痛い痛い痛い。み、みしみし言ってるよ、シウォン!」
ともすれば愉しんでいるようにも聞こえるワーズの声に、煙のせいで人間に似た姿となっているシウォンが歯を軋ませる。
「やかましいっ! 痛いだと? ったりめぇだろうが! 何故この俺が、てめぇなんぞに優しく接してやらぁならん!? お前のせいで、俺は、泉に、会う事もままならず!」
隻腕の身であるにも関わらず、弾みが付く度、ワーズの周りの床が軋みを上げて沈んでいく。
どれだけの力が込められているかは知らないが、普通の人間なら死んでいても可笑しくない状況に、ようやく感情の追いついた泉が、青褪めた顔で足を踏み出した。
これ以上やったらワーズさんが死んじゃう――事はないだろうけど。
「し、シウォンさん! 止めて下さい! 私ならここに」
「うるせぇ! 邪魔するな!」
「ぅぐっ!?」
シウォンの肩に触れようとした刹那、ワーズを押し付けていた腕が泉を叩く。
咄嗟に後ろへ退いた足のお陰で、受けた衝撃は半減したものの、跳ばされた身体が床か壁に叩きつけられるコースを変える事は叶わない。
奇人街最強の猫から知らぬ内にその一部を与えられ、危機に際して敏捷に動ける泉だが、身体の造りに劇的な変化は在らず。
掛かる負荷の大きさに、クッキーを抱いたまま、意識が遠退きかけた。
……死ぬのかな、このまま。
今まで、何度も直面してきた死の危機。
それらを乗り越え、だというのに、結末は激情に駆られた腕の一振りに託されて。
気高い死に様に理想を抱いた憶えはないが、非日常を重ねた分だけ、呆気ない幕切れに対する切なさが込み上げてきた。
足掻くことすら出来ず、閉ざされていく視界。
と。
「っぎゃ!?」
突然、反対方向に片腕が引っ張られ、脱臼寸前の嫌な響きが肩に走った。
次いで、放り出されれば、肩を柔らかく抱き止められる。
唐突な動きの連続に、ぐわり揺れる頭を振っては、のろのろと顔を上げる泉。
目を瞬かせ、はっきり見やると、至近に緑の双眸が揺れており。
「泉……? 来て、いたのか……」
「うぉわ、シウォンさん。ど、どうも……」
なんとも間の抜けた返事が口を付いて出てきた。
額に敬礼の手なんかも付けつつ。
ふざけたその態度がいけなかったのか、それとも良かったのか、数秒の間、泉を見つめていたシウォンは、少々乱暴に彼女を己から付き離した。
とはいえ、見境なしに腕を振るった時とは比べ物にならないくらい、丁寧な動きではあったが。
自分の足できちんと立った泉は、よろける姿勢を正しがてら、ワーズへと視線を向ける。
沈み込んだ床から、自身の身体を引き剥がすように身を起こす様を見、内心でほっと胸を撫で下ろした。
「……何しに来た、小娘。俺が……死んでいるかどうかを調べにか? 残念だったな。まだこうして、生きていて……」
「ええと……?」
煙を燻らせ、背を向けるシウォンの言葉に、そちらへ意識をやった泉は眉根を寄せた。
何故、シウォンの生死を確かめるために、わざわざここまで来なくてはならないのだろう?
奇人街の常識とまで認識されている存在ゆえに、死を迎えたならば情報は素早く行き渡るに違いない。
いや、そもそも。
「まだ……って、シウォンさん、病気か何かに掛かっているんですか?」
「…………」
気遣わしげな声音で問う泉だが、思いは半信半疑。
シウォンの応えも、肩が少しばかり下がっただけなのでよく分からず。
病気? それにしては随分――
つと、泉の目が、ランと同じ方向を見やった。
薄暗い部屋の、更に滲む様な闇の中、巨大な天蓋付きの寝台の上に、影の輪郭だけでも際立つ女の姿が幾つもある。
それもたぶん、ひと目で女と分かる事から、一糸纏わぬ姿で。
艶かしく蠢く彼女らは、泉のその視線に対し、様々な反応を示していた。
突き刺さる憎悪や邪魔された事への不快。
振って湧いた展開へ面白そうに笑む者もあれば、人狼最強のランに色目を使う者もあり。
中には、くすくす笑う最中で、賭け事紛いの話もちらほら聞こえてきた。
大多数を占める感情は好奇心だが、晒された泉は居た堪れなさに目を逸らした。
代わりに、寝台にあれだけの女を侍らせていたシウォンの、色んな意味で健康そうな後姿を見る。
荒々しい雰囲気そのままに乱れてはいても、青黒い髪は薄闇の中でしっとりとした光沢を放ち、均整の取れた裸の背は、滑らかでありながら程好く引き締まった筋肉を浮き彫りにしている。
腰から下を覆うのは、見慣れた白の衣ではなく、髪の色によく似た青い線を描く黒の衣。
まじまじと眺めた泉、はっと我に返っては視線を逸らした。
つい見惚れてしまったが、上半身だけとはいえ、男の裸を見慣れている憶えはないのだ。
海水浴やプールとて、数えられる程しか行っておらず、専ら気になるのは、自分と同じ年頃の少女の水着姿とスタイル。
人と比べるなんて馬鹿らしいと言われるかもしれないが、女の目は男より厳しいモノである。
あの子と比べて、自分の格好は可笑しくないだろうかと、詮無い事ばかり考えてしまい、元より女友達だけで遊ぶのだから、自然、目は同性にばかり向けられる始末。
変な話、男に目移りしている暇はなかった。
遅れてやってきた羞恥の熱に両頬へ手を当てる。
やはり病気ではないだろうと、記憶の中の後姿を冷静に見つめながら。
するとシウォンから、ぽつり、非難染みた声が掛けられた。
「お前……忘れているのか? あの葉を使いの女に持たせたのは、お前だろう? 俺が……嫌だと。死を願う、と」
「?…………ああ、あれ。恵明の葉の事ですか?」
「ああ、あれ……って、お前…………お前にとって俺の求愛は、その程度の事だったのか?」
「求愛……あー」
傲岸不遜な態度を常とする美丈夫の、悲嘆に暮れた姿を受け、泉の目がすーいと宙を泳いだ。
結局ワーズに読んで貰った、ニパが持ってきた手紙は、シウォンの言う通り、身の毛がよだつ程、粘着性の強い想いに彩られていた。
周りからシウォンが自分を好いていると聞かされても、自分では読めない手紙から告げられても、いまいち要領を得なかった泉。
けれど、本人から直接、求愛などと素面で言われたなら、返事に窮して言葉が詰まる。
まだ食べ物扱いされている疑いは晴れないが、それを抜いても、どう答えていいやら分からない。
はっきり言ってしまうと、シウォンの事は嫌いではない。
知り合いの分類なら好きに属するだろう。
が、しかし、恋愛云々の対象として見ろと言われたなら……
シウォンさんて、そういう相手として想像し難いタイプなんじゃないかしら?
どちらかといえば、一人の女に愛を注ぐより、万年女をとっかえひっかえ自由に傲慢に突き進んで行く方が似合っている。
勝手な思い込みではあるが、話で聞く限りの遍歴や現状況を鑑みるに、どうしても泉にだけ愛を囁くような男とは思えず。
仮にそうだったとしても一時だけで、飽きたらさくっと終わりそうなイメージがあった。
無論、終わるというのは、関係その他諸々、泉の命も含めて、である。
碌でもない発想に至った泉はその頭を軽く振り、シウォンへ視線を戻しては頬を掻いた。
恋愛等の話は一先ず置いておくとして、まずは誤解を解こうと軽く息を吸う。
「……シウォンさんは、恵明の葉の言葉、知っているんですよね?」
「ああ。だからこそ、俺は」
「実は私、ニパさんに渡した後で知ったんです、その言葉」
「後、だと?」
被せるように告げた真実は、苦しそうだったシウォンの頬を若干解した。
ついでに身体まで泉を正面に捉えたなら、思わず一歩、彼女の身体が大きく下がる。
浮かぶ愛想笑いのこげ茶の眼で、シウォンの眼の下にある隈を確認して。
「ええと、なんと言いましょうか、物に託された言葉を大切に為さるのは良い事だと思うんですけど、今後はもう少し、広い視野をお持ちに為られた方が、宜しいのではないでしょうか?」
揉み手の勢いで、決してそのままを言わずに婉曲した表現を用いた。
察しが良いのだろう、泉の意を知り、段々とシウォンの顔に精彩が宿ってきた。
「つまりそれは……恵明の葉の効用が睡眠を誘発すると知って? 眠れないという俺のために?」
どんぴしゃり。
当てて貰ったは良いが、おずおず確認を取りつつ近寄ってくる、喜色一歩手前の男はどうしたものか。
しかも、彼の口には未だ燻る煙があるのだ。
種によって効能が変わる煙は、人狼ならば本来の獣の姿を奪い、人間であるなら喫煙者の意を汲む動きを強要する。
シウォンの好きの種類がどうあれ、あまり近づかれるのは不味い。
そう考えた泉は明確な返答を避け、また一歩距離を取っては、動かした手の中のクッキーを思い出した。
「そ、そうだ、シウォンさん。あの、コレ、今更ながらご挨拶なんですけど」
「挨拶? 俺とお前の仲なのに? 律儀な奴だ」
完全にペースを取り戻したと思しき笑みが、歩みだけでは飽き足らず、腕まで差し伸べるシウォンに浮かんだ。
シウォンさんと私の仲って……何?
物凄い見解の相違を感じる言葉に、口角を引き攣らせた泉は、それについて話し合いたい気持ちと訂正を入れたい気持ちをぐっと堪え、逃げ腰でクッキーの袋をシウォンへ向ける。
「ええと、クッキーです。といっても私が焼いたんで、味の保証は奇人街の材料任せになっちゃいますが」
「お前が? わざわざ俺のために……」
対し、煙を横に逃がしたシウォンは、いよいよ壮絶な笑みを熱病に熟れた緑の眼に携え、伸ばした手でクッキーの袋を取る――ように見せかけて、その実、泉の手へと指先を滑らせた。
「!」
気づいた時には遅く、泉の手首がシウォンの手に掴まれる。
直前。
「ああ、そういえば」
「なっ!?」
ひょいと、横合いから伸びた赤いマニキュアの白い手が、泉ではなくクッキーの入った袋を攫っていった。
これに動転したシウォンは、掴み掛けた泉の手首を放し、奪われたクッキーを追う。
「ワーズ! お前、何を――」
「いやぁ、泉嬢。ボク、すっかり忘れてたけどさ? シウォンてうわばみだから、甘い物得意じゃないんだよね。てなわけだから、コレはやっぱり、美味しく食べられるボクが貰っとくよ」
言って、シウォンをのらりくらりと避ける黒一色の男は、にたり笑う混沌の目でランを示した。
ランと一緒に行けという意を受け取った泉は、いじめっ子さながらに囃し立てるワーズへ心の中で感謝を告げ、シウォンの視界に入らぬよう、ランの下へと向かう。
途中。
「くぁっ!? わ、ワーズ! 何、喰ってやがんだ、てめぇ!?」
「ふ? もひふぉん、ふっひーらほ?」
「っ、行儀の悪いヤツめ! 口の中に物を入れたまま喋るな! 何を言っているのか分からん――じゃねぇ、喰うなと言っとろうが!!」
大人げない男たちのやり取りを耳にしつつ。
「ランさん」
ひそひそ話す声では、逆に耳についてしまう人狼の性質から、普通の音量でランに話しかける。
が、一点を凝視し続ける彼はこちらを見ず。
訝しみながら、泉は薄青の袖を小さく引っ張った。
今度は反応を見せるラン。
音がしそうな程、錆付いた動きで泉を確認した金の眼に、泣く一歩手前の潤いがある。
「ふ……ふふふふふ。初恋は実らないって聞きますけど、酷いですよね」
「え、ええと……?」
何を言いたいのか分からず、泉はランが見ていた先を確認しようと身を逸らす。
けれど、そこには寝台しかなかったと思い当たる前に、黒い爪を持つランの手が、泉の目を覆い隠すように頭を鷲掴んだ。
「……行きましょう。泉さんには目の毒です。空気も悪いですし。用が済んだのなら、早く逃げないと」
「ひゃ、ひゃい……?」
静かな声と共に頭だけ後ろに引き摺られ、ランの手を押さえた泉は足をもつれさせながら、身体の向きを進行方向へと変えた。
扉の傍で待機していた司楼に目礼し、廊下へ足を下ろした矢先。
「このっ――――っ!? い、泉……? 泉はどこだ!?」
悪態から戸惑いに変化したシウォンの声が響いた。
気付かれたとランの身体が震えたなら、
「やばっ! 走って、泉さん!」
視界を取り戻しても、振り向くなと添えられた手に、頭がぐいっと押し出された。
よろけながら、少しだけ目を後方へ向ければ、辺りを忙しなく見渡すシウォンの横で、袋を小脇に抱えつつクッキーを頬張る白い面を見る。
どうやらワーズの足止めは終わったらしい。
「…………」
ただ単に、クッキーが食べたかっただけとも取れる様子を受け、顔を前に戻した泉に諦めの笑みが浮かんだ。
ある意味、期待を裏切らない人だと思う。
なので泉が祈るのは、こちらに背を向けシウォンを足止めようとするランの無事。
痛がりはしても、人並みはずれた丈夫さを誇るワーズとは違い、ランは先の人魚騒動で腕を失ったシウォンと同じ人狼。
過去に勝てたとは言っても、本人曰く、まぐれらしいので心配は尽きない。
「あ」
走って更ける傍ら思い出す、ワーズが預かっている手提げ鞄の中身。
渡そうと思い立っても渡せず仕舞いだった、ランの分のクッキーに、泉はまた、視線をそちらへと送り。
「待て、泉っ! どこへ――邪魔だ、小僧!」
「ぐっ……行かせる訳にはいかない!」
ランに行く手を阻まれ、煙管を吐き出したシウォンの怒号を受け、泉の身体がびりびりと震えた。
余所見をしている暇はない。
理解し、長い廊下を走っていく。
人間の足でシウォンから逃げ切れるかどうかは分からないが、足止めしてくれているランには報いねばなるまい。
荒い息を付きつつ、前だけを見て走る。
程なく、分かれ道にぶち当たり、どちらか迷った泉は右に曲がり――かけ。
「違う、奥方! 左、左!」
「はぇっ?」
聞いた事のない声にそちらを見やれば、やはり見覚えのない人狼の姿がある。
酸欠の頭で思いっきり眉を顰め、何なんだと目だけで問えば、また別方向から違う人狼が指を差した。
「こっちは行き止まりです。壁にぶち当たっちまいますって。“道”を目指しておいででしょう? なら、そっちが正解!」
「は? へ? な、なんで?」
親切心丸出しに、下心はありませんと示される方向に惑う泉。
大体、ここは虎狼公社で、頂点であるシウォンに従うのが当然である。
騙すつもりなのだろうか?
そんな風に思えば、焦れた鋭い爪にぐっと右へ、腕を引っ張り込まれた。
悲鳴を上げそうになったなら、慌てて塞がれてしまう口。
「しぃーっ! 止めて下さい、奥方。こんなトコで悲鳴なんか上げられちゃ、頭の逆鱗に触れちまう! ラン・ホングスの折角の苦労が水の泡だ。俺たちだって、死にたかないんですよ!?」
耳を伏せ、怯えを表す相手に、目を見開き頷いた。
するとあっさり手が放され、背中を押される。
「ほら、さっさと行って下さい。道順が分からなけりゃ、その辺の奴らが教えてくれますから」
「え、で、でも、どうして?」
一の楼の人狼全員が味方してくれる発言に、足踏みが遅くなったなら、また新たな人狼から舌打ち混じりに声が届く。
「あーもうっ、ぐずぐずしている暇はねぇってのに! だがこの際だ、はっきり言っておきやしょう、奥方。この楼に限らず、虎狼公社に属する人狼は全員、あんたを微力ながら手助けすることになってんすよ。勿論、頭のお耳にゃ入れられねぇ話ですがね」
次いで、別の人狼が口々に告げた。
「なに、理由は簡単でさぁ。奥方の、頭に対する影響力が大きいんで、覚えめでたくありゃ、後で甘い蜜が吸えるかもしれねぇって寸法で」
「だからと、勘違いされちゃ困りますが、俺らは奥方にどうこうして欲しいなんて思っちゃおりやせん。言うなれば、まじないってヤツですかね」
「そうそう。なんでどうぞ、気兼ねなく先にお進みくだせぇ」
ずらっと乱れなく先を示され、困惑しつつも礼を言った泉は、もう一つだけ彼らに問うた。
奥方、とは以前、クイたちに呼ばれた覚えがあるため、何の事かと尋ねる真似はせず。
「あの……シウォンさんて、あなた方の頂点なんですよね? いいんですか、その……私、逃がしちゃって。自分で言うのもなんですが、捕まえた方が――」
「いや。んなことしたら、逆に殺されちまいますし」
「奥方の意思を無視していいのは、頭だけでしょう」
「あたしらは奥方に付きますよ。なんせ」
すっと一呼吸置き、彼らは一様に口を開く。
「「「そっちの方が面白そうですからね」」」
「……はあ」
呆れ返った泉の気のない返事に、うんうん頷き。
「なんせあの頭が、ですよ」
「人間の小娘風情――っとと、失礼。兎に角、奥方の行動に一喜一憂されるなんざ、甚大な被害があろうとも、見世物以外の何者でもありやせんし」
「いやぁ、長生きってのはするモンですなあ」
「…………」
しみじみ語る彼らを泉は沈黙により、横へと流していく。
一応、礼は告げつつも、やり切れない思いから溜息が自然と零れ出る。
そうか、これも娯楽なんだ。
人狼って…………変。
彼らと別れて後も迷う度、こそこそ案内してくれる他の人狼の存在に、泉は心強い反面、今後どう接したものかと悩む羽目に陥った。
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