妖精の章 二十九

 

 周りが眠っている中、一人だけ起き続けているのは難しい。
 寝入れば死が迫る――そんな状況でなければ、尚の事。
 加え、泉が見つめ続ける雨には、元から人を安らぎに導く効果があり。
「…………」
 こくり、こくり、結わえられた褐色のクセ毛が船を漕ぐ。
 その都度、目を瞬かせる泉に対し、膝上の猫は丸まったまま、横のエンは器用に煙を燻らせたまま、各々静かな呼吸で眠りについている。
 彼女の背後では、ワーズが縫い物をしており、時折、衣擦れや糸を通す音が聞こえるくらいで、終始無音に等しい状態。
 ある意味、奇人街に来てから初めての、穏やかな時間が流れていた。
 全てが自分本位の奇人街には、時計というモノがない。
 陽の流れや月の訪れは、泉の元居た場所と同じようだが、それを正確に計る機械はなかった。
 あったとしても、誰も時計の指針を生真面目に読み取りはしないだろう。
 ヘタをすれば、永劫に近いくらい長い時を生きられる彼らにとって、時の流れなど、朝と昼と夜が大雑把に分かれば良いのだ。
 ともすれば、こうしてゆったりとした時間に、いつまでも浸っても良いくらい、奇人街の時の概念は薄い。
 だというのに、毎日毎夜目まぐるしいのは、長い時間を生きながら、一瞬一瞬の生に、住人たちが貪欲だからかもしれない。
 ……自分に正直過ぎるところは、決して褒められたモノではないけれど。
 なので泉は。

「ここにいるんでしょ、人魚!!」

「はわっ!?……あ、いらっしゃいませ」
 目が醒める甲高い少女の声に、ぱちくり瞬いた後でも、さして混乱せず、新たに現れた人影へ小さく会釈する。
 穏やかな時間をものの見事にぶち壊した人影は、第一声の怒り肩を引っさげたまま、泉の下へとずんずんやってきた。
 けぶる雨空を背にした姿が、近づく度、鮮明になっていく。
 年の頃は泉と同じであろうか。
 フェイの例があるため、生きている時間の長さは知れないが、めくじらを立てた顔立ちは、泉とそう大差ないように思えた。
 ただし、その造りは泉より整っている。
 少しキツい切れ長の瞳に、淡く色づく艶のある唇。
 頬は怒りのためか多少赤を滲ませ、鼻梁共々丸みとシャープさを帯びた輪郭に掛かる、ボブの髪質は滑らかなぬばたまの黒。
 右耳にだけ、白地に褐色の脈入りの石が嵌め込まれた、金の耳飾りを付けており、耳の後ろから引っ掛ける形は、奇人街ではまず見かけない、イヤホンに酷似している。
 ふわりとした暖色の衣が象る線は曖昧だが、あどけない雰囲気に所々、女性特有の丸みを携えていた。
 可愛いと綺麗、その両方を兼ね備えた美貌の少女。
 泉はぽけっとこれを眺め。
 わー、これはまた、綺麗な子……って、あれ?
 少女が深緑の双眸を爛々と怒りに光らせ、目の前で仁王立ちしたなら、泉の眉が微かに寄った。
 何だろう、この子。誰かに似て……いる?
 誰とははっきり分からないが、そんな風に感じた。
 これを肯定する風に、少女はびしっと泉へ指を付きつけ。
「私は認めないんだからね! パパの方から好きだって言ってても、貴方にパパは渡さない!」
「は……ぱぱ? ええと?」
 形の良い爪の先端を見つめ、若干寄り目となった泉の頭に、“パパ”という単語に該当しそうな名前が、ずらりと並んだ。
 ただし基準は、泉を好きという範囲ではなく、泉が奇人街で知り得た男性。
 中でも、今現在、一番近くにいる名前が大きく現れており。
「ぱ、ぱぱって、エン先生の――?」
「はあ!? 何言ってるのよ! そんなお子様、私のパパなわけないでしょう!?」
「お、お子様って……」
 すげなく否定されたばかりか、思わぬ切り替えしに、泉は視線を隣のエンへと移した。
 まあ、確かに、常に包帯巻きのエン相手、少女が似ているかどうか、知れるはずもなし。
 それでも真っ先に候補として挙がったのは、彼女の唐突な発言ゆえである。
 脈絡のない話に、何かしらの意味を付ける事は、あまり賢いとはいえないが、情報が少ないのだから、仕様がない。
 ともあれ、パパから打って変わり、エンへのお子様呼ばわりに目を丸くする泉。
 ではやはり、少女の生きてきた時間は、自分より長いのだろうと巡らせれば。
「お子様はお子様よ! 世間的には大人だったとしても、まだ子どもな私より後に生まれているんだから、当たり前でしょう?」
「は……子ども? って、じゃあ、あなたは……姿そのままの齢?」
「ええ、そうよ! 私は見たまんまの時間しか生きていないわ! 悪いかしら!?」
「いや、悪くはないですけど……うぇえ?」
 度重なる少女の爆弾発言により、最初の会釈はどこへやら、混乱の真っ只中に叩き込まれてしまう。
 ついには両手の人差し指であちらこちらを指差し、数を数え始めたなら、それまで黙っていた少女がタンッと足を踏み鳴らした。
「もうっ、理解の遅い人ね!?」
 どうやら、泉の理解が追いつくまで待っていたらしい。
 律儀なのか、短気なのか、少女は泉の目が自分を捉えるなり、「いい!?」と前置き。
「だからね、そこにいる、先生とか言われている奴は、私や貴方より、生きている時間が短い――つまり、大人の条件が分かっていなければ、私よりニ、三歳年下なの。ちなみに私の齢は十六くらいだから!」
「わ、同い年……え? じゃ、じゃあ、エン先生の生きてきた時間の長さって」
「十三年から十四年、ヘタすると十二年くらいよ」
 時間の概念が薄い奇人街だが、単位:一年の長さは泉が元居た場所とほぼ変わらないという。
「…………」
 再び泉の視線が少女を離れ、エンへと注がれる。
 精神的に子どもだと聞いていた彼は果たして、本当にまだ、子どもの域を出ない時間しか生きていなかった。
 少女が嘘をついている可能性も捨てきれないが。
 嘘には大概、つく方にメリットが生じるものであり、こんな嘘、ついたところで少女が得られるメリットがあるとは思えず。
 かといって、泉より上背のある、寝たまま煙管をふかす、徹夜明けの手術までこなす、そんなエンが、自分より本当は齢若いなど、簡単には受け入れられない。
 地味にショックを受ける泉をどう思ったのか、視界の端で少女がやれやれと首を振った。
「知らなかったなら、驚くのも無理ないけどね。まあ、奇人街じゃ珍しい事じゃないし、見た目通りの齢の扱いでも問題ないから、そこまで気にする必要はないわよ」
 まるで慰めるかのような口振り。
 ちょっぴり気持ちを取り直した泉は、今一度、少女へと向き直った。
 と、途端に、少女の眦は怒りを思い出して吊り上がり。
「兎に角! ちょっと横道に逸れちゃったけど、私は認めないんだからね!」
「え、えと、すみません、話を進める前に」
「何よ?」
「じゃあ、結局、ぱぱって誰の事なんですか?」
「…………………………あれ? 言ってなかったっけ?」
 恐る恐る手を上げて問う泉に対し、怒るでもなくきょとんとする少女。
 泉が頷いたなら、頬を掻きかき、反省の表情を浮かべた。
「そっか。それは御免なさい」
 ついでにぺこり、頭を下げた。
「い、いえ」
 あまりの変わり様に慄けば、少女は掻く場所を頭へと移し。
「雨の日って滅多に動かないから、ちょっぴり暴走しちゃったわ。そういえば、自己紹介もまだだったわね?」
 自分の不甲斐なさを嘆くが如く、少女は呆れ返った溜息をついた。
 泉はこれへ、愛想笑う事も出来ずに惚ける。
 傲慢さと素直さとを兼ね備えた少女は、奇人街の住人にしては珍しい礼節でもって、お辞儀を一つ。
 自身の胸へ手を置き。
「私の名前は、ニア・フゥ。虎狼公社の頂点、シウォン・フーリの……何番目かは分からないけど、まあ、娘ね」
「……ああ。誰かに似ていると思ったら、シウォンさんの――――娘さん!?」
「きゃっ、な、何、いきなり!?」
「い、いえ。いやでも、だって……」
 紹介を受けた泉は、言われてみれば疑う余地もない容姿のニアに納得しつつ、動揺から俯き加減で口元に手を当てた。
 シウォンに孫がいるとは聞いていた。
 孫がいるなら、当然、子どももいるだろう。
 それは分かる。
 分かるが……
 ちらり、自分と同い年の、シウォンの娘だというニアを見やった。
 泉の妙な沈黙に、やや困惑を浮べる彼女は、向けられた視線に小首を傾げる。
 すると、実年齢より幼い表情が垣間見え、更なる動揺がこげ茶の瞳に現れた。
 妻を娶る孫がいるくらいだから、その親である子どもの年齢は、ある程度高いとは察しがつく。
 場所柄、珍妙な家族構成になるのも分かってはいる。
 場合によっては、シウォンの年齢を子どもが越す事だってあるだろう。
 と思えば、今度は逆に、今年生まれたばかりの子どもだっているはずで。
 だが、しかし、けれど――
「同い年……同い年かー…………同い年はなー………………せめて、一歳でも年上か年下なら……………………はぁ」
「ちょっと! 何よその態度は! 人の顔見て辛そうな溜息つかないで!」
 怒りながらも、億劫そうな泉の様子を受け、ちょっぴり傷ついた表情を浮かべるニア。
「あ、すみません、つい」
「ついって何よ、ついって」
 泉のなっていない謝罪には脱力しつつ、気を取り直すためか首を振った。
「もうっ。パパを惑わすような人魚って聞いていたから、どんなにアクの強い女かと思ってたのに……はっ!? それともこれは全て演技で計算!?」
 と思えば、ぐぐっと身を乗り出して、何かしらの期待を込めた驚愕の眼差しを送ってくる。
「たとえば、突然現れたチンケな小娘を煙に撒いてやろう、みたいな!?」
「チンケって……」
 稀なる美少女・ニアを前にしてそう思える女など、自他共に認める相当の美女か、とびっきりの勘違い女ぐらいなものである。
 自分の方が“チンケ”という表現を受けるに相応しいと思った泉は、そんな結論に達した己に打ちひしがれつつ。
「や、違いますから。ただ単に、私と同い年の娘さんがいるのに、その、好きだっていうのが、非常にビミョーと言いますか」
「なっ」
 宥めるべく手の平を向ければ、まるでそこから攻撃でも受けたかのようにニアが怯む。
 数歩よろけ、踏み止まっては、腕を振って宙を切り、泉へと大きく一歩、足を踏み鳴らした。
「何でっ!? パパ、格好良いじゃない! 年の差なんて関係ないし、同い年が嫌だっていうなら、私、頑張って大人になるわよ!?」
 何やら妙なスイッチが入ってしまったらしい。
 やけにズレた熱弁を振るうニアに対し、泉は困惑から頬を掻いた。
「え……えと? 確かニアさん、私の事は認めないって?」
「言った、言ったわよ、確かに! でも、女だったらちょっとくらい、パパの事、いいなって思ってくれたっていいじゃない!? なのに、なのに……む、娘が同い年程度で駄目だなんて……許容範囲、狭すぎよぉっ!!」
「え、えー……」
 次いで顔を覆い、号泣のてい。
 本当に泣いているのかどうかは分からないが、あまり煩くされても困る。
 何せ近くには、徹夜明けで眠っているエンと膝上で丸まる猫、人間以外を嫌うワーズがいるのだ。
 泉としては、ニアよりエンの寝不足解消を優先させたいし、かといって、猫の機嫌を損ねたニアの身に、酷い事が起こっても欲しくない。
 ワーズと関わって、大概の住人がそうであるように、気分を害しても欲しくなかった。
 だがしかし、それでニアの納まりがつく妙案が、浮かぶ訳もなし。
 どうしたものかと迷う泉は、こんな時、最初に動きそうな店主を振り返り。
 な、何着作るつもりで……いやそれより、凄い集中力だわ。
 へらへらした顔はいつも通りの店主、どうやらベビー服の製作に熱中するあまり、こちらの騒々しさに気づいていないらしい。
 再び泉の中にもたげる、ベビー服の行く末。
 ぞっとするどころか、火照る顔に戸惑い、ニアへ視線を戻したなら、号泣はどこへやら、物凄い目で睨まれている事を知った。
「くっ……許容範囲狭いくせに、ゲテモノには目がないってわけ?」
 「パパ」を蔑ろにされたと思ってか、ニアが吐き捨てるようにそう言い。
「ゲテモノ……って、ワーズさんの事ですか!?」
 すると今度は、泉の頭がぷちっと鳴った。
 住人に対するワーズの酷い扱いは知っている。
 だから、住人であるニアが好感情を持てないのは理解できる。
 だが、泉に関連して彼が貶される事には納得出来なかった。
 突拍子のない事はままあれど、何から何まで世話になっているのだ。
 感謝こそすれ、その感情を“ゲテモノ”呼ばわりされる筋合いはない。
「私個人になら兎も角、ワーズさんにまで失礼な事を言わないで下さい! ワーズさんだって十分素敵です!」
「い、いきなり怒鳴らなくても…………でも、趣味悪」
「んなっ!」
 噛み付けば、怯んだニアがぼそりと更なる悪態をつく。
 頭に血が昇った泉は、ぎりっと歯を噛み締めて続けた。
「趣味、なんて……それは確かに、人間っていうだけで世話焼きたがるし、人のスリーサイズ勝手に入手して服作るし、下着をパシリで買わせたり、スプラッタ見ながらの食事強要したり、身体に良いってだけで変なモノを無理矢理食べさせたり、色々、本っっっ当にっ、どうかと思う事は多々ありますけど」
「うわ……まだあるんだ。結構、鬱憤溜まってるのね」
「うっ」
 転じて憐憫の情を向けるニアへ、泉は一瞬だけ詰まった。
 なまじ、シウォンに似ているだけあって、彼から「可哀相に」と同情されている気分に陥ってしまう。
 加え、「それなら俺のところに来い、手厚く持て成してやるから」とも。
 浮かんだ想像を振り払うべく、頭をぶんぶん振った泉は、大きく息を吐いて小さく息を吸い。
「でもシウォンさんよりかは、私にとって――人間にとっては良い人……のはずです」
「……自信、ないのね?」
「うぅ」
 またしても的確に、痛いところを衝かれてしまった。
 ワーズを弁護するつもりが、ぐうの音も出ない状況にまで追いつめられ、しくしく泣きたい気分だった。
 どう頑張れば、ワーズの評価を持ち上げられるのか分からず、ニアと顔を合わせる事も苦しくなった泉は俯いてしまう。
 膝上の猫を見つめても、店主の飼いネコではない芥屋の猫は、助け舟も出さずに目を閉じたまま。
 孤立無援で項垂れる泉に、差し伸べられる手は。
「な、何て言うか、御免なさいね? 店主を悪く言った事は謝るから、そんなに気を落とさないで?」
「ニアさん……」
 ぽん、と優しく肩に置かれた手。
 少しだけ眦に涙を浮かべた泉は、和ませるように微笑むニアを見やり、小さく鼻を啜った。
「あ、ありがとうございます」
「ううん。私も言い過ぎたわ。よくよく考えたらパパって、同族・他種関係なく、傍若無人に振舞う、残虐非道な人だものね。多少、変な言動が多くても、自分の種だけは大切にする店主と比べたら、そりゃ、幾らか店主の方がマシよね?」
 ふぉ、フォローまでしてくれるんだ……
 他種の腹を裂くというシウォンの娘ならば、ニアは生粋の人狼だろう。
 それなのに、いまだかつて奇人街では経験した事のない類の優しさに触れ、感動の面持ちが泉に宿った。
 けれども、そこはやはり奇人街。
 感激しても束の間の事。
「でもね、パパも貴方に好かれようと必死なのは分かって上げて? 娘が同い年ってだけで引かないで? うん……認めないって言ったけど、訂正するわ。私、貴方の事、認める。恋の好敵手(ライバル)として!」
「は…………故意のララバイ?」
 何かしら聞いてはいけない言語を聞いた気のする耳が、ニアの告白を捻じ曲げ、奇妙な単語を口走らせた。
 茫然自失のていで、ぽつりと漏らした表とは裏腹に、泉の頭の中は大混乱に陥っていた。

 て、訂正って事は、シウォンさんが好きとかって言うアレを認めるって話で、私としては認められなくても良かったのだけれど……それで、こ、故意のララバイ、じゃなかった、恋の好敵手っていうのは、ソレはアレ、つまりは、何!?
 ……待って、待って。落ち着くのよ私、落ち着け私! ニアさんはシウォンさんの娘で、最初私を認めないって言ってて、それって普通、新しいお義母さんを認めない的な話のはずよね、シウォンさんの妻になる気も、同い年のお義母さんになる気も私には全くないけど。
 兎も角、コレをいきなり認めるっていうのは、私がニアさんのお義母さん――って、冗談はさておき、まあ、普通はそんな感じで、なのに認める箇所が恋の好敵手って事はっ!!?
 ぱ、ぱぱって言ったのに、実の娘なのに、ニアさんが恋している相手って……

 シウォンさんなんですかっ!?


 この間、過ぎたる時はコンマより下の世界。
 そうであっても、泉の惚けた発言にむっとしたニアは、少しばかり頬を紅潮させて言う。
「ちょっと! 変な取り方しないで頂戴! 恋の好敵手よ、恋の好・敵・手!」
「こ、恋の、好敵手……」
 何度も告げられては、納得せざるを得ず。
 嫌な冷や汗を頬へ垂らして青褪める泉に、腕を組んだニアはよろしいと頷いた。
「そう、パパを巡る恋の好敵手」
「ぱ……」
 大混乱の問いかけが、本人により実にあっさりと肯定され、絶句するしかない泉。
 対し、ニアはそんな泉を顧みることなく続けた。
 若干唇を尖らせて。
「まあ悔しい事に、今のところは貴方に軍配が上がりまくっているし、パパは血の繋がりを気にするタイプだから、私の事なんて全然相手にしてくれないんだけどさ」
 し、シウォンさん……私、今初めて貴方の事、凄く良識のある人だと思いました。
 娘と同い年でも、真っ赤な他人に想いを寄せる方が、まだまだ心臓には良かった。
 奇人街の、ないに等しい倫理観を、その優しさから持ち合わせていると期待した分、ニアの告白は多大なダメージを泉にもたらす。
 その後、二、三、何事か語ったニアは、「お互い、頑張りましょう」と泉の手を握り、晴れやかな顔で芥屋を去って行った。
 振られた手を振り返した泉、役目を終えた手の平をじーっと見つめては。

「ふ……ふふふふふ――――もぉ、ヤダ」

 先程、ニアがそうしていたように、けれど静かに、両手で顔を覆った。

 

 


UP 2009/10/7 かなぶん

目次 

Copyright(c) 2009-2019 kanabun All Rights Reserved.

inserted by FC2 system